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死亡事故の逸失利益

はじめに

令和2年の仙台市における死亡事故のうち、65歳以上の高齢者の割合は、亡くなられた方全体の43.5%に達しています。

被害者の方が交通事故で亡くなられた場合、逸失利益の算定がしばしば問題になるのですが、高齢者の場合は、例えば収入が年金収入のみであった場合の金額算定や、就労可能年数(働いて収入を得ることができる年齢)をどのように考えるか、など特有の問題が出てきます。

場合によっては高齢者であることを理由に、保険会社が低い金額を提示してくることも考えられます。
本ページでは、高齢者の死亡事故における逸失利益の算定について説明します。

高齢者の逸失利益の計算方法

死亡事故においては、通常下記の計算式で逸失利益が計算されます。

基礎収入額×(1-生活費控除率)×就労可能年数に対応するライプニッツ係数

それぞれについて、高齢者の場合にどうなるか、見ていきましょう。

①基礎収入

ア.働いていた方について
被害者の方が事故前に働いていた場合には、その事故前の収入が基礎収入となります。

イ.年金収入の方について
高齢者の場合、働いておらず、年金収入のみという方も多いかと思いますが、年金収入であっても、基礎収入となります。

ただ、すべての年金が基礎収入となる訳ではありません。

老齢基礎年金、老齢厚生年金、退職年金、農業者年金、恩給、障害基礎年金(子や配偶者の加給分を除く)、障害厚生年金(同前)、傷害補償年金、傷害特別年金等については、基礎収入と認められた裁判例があります。

これに対し、遺族厚生年金等や軍人恩給の扶助料等については、受給者自身の生計の維持を目的としたものであるとして、基礎収入に含めない、という判断をした裁判例があります。

ウ.家事従事者(主婦・主夫)だった方について
主婦・主夫として家事労働をされていた方については、年齢に関係なく、学齢計・女性全年齢平均賃金が基礎収入とされます。

エ.働く予定があった方について
高齢者でも、働く予定があった(例えば就職活動中だった)場合には、労働能力及び労働意欲があり、かつ、就労の蓋然性がある場合には、就職によって得られるであろう収入が基礎収入とされる場合があります。

②生活費控除率

生活費控除とは、被害者の基礎収入から、被害者が存命であれば収入から支出するはずだった生活費を控除する、という考えです。

これは高齢者でも若年者でも違いが無く、下記のような考え方になります。

・(被害者が)一家の支柱で、被扶養者が1人…40%
・一家の支柱で、被扶養者が2人以上…30%
・年金受給者…30~60%
・その他(女性)…30%
・その他(男性)…50%

 

③就労可能年数

判例上、就労可能年数、つまり労働による収入を得る可能性がある年齢は、67歳とされています。

もっとも、現代において、67歳を超えて働いていらっしゃる方は沢山いらっしゃいます。

そのような事情から、現在では、
1. 現在の年齢から67歳までの年数と
2. 現在の年齢から平均余命までの年数の2分の1を計算し、
1と2で長い方を就労可能年酢として考える、という考え方になっています(事故時点で67歳を超えている方は当然②になります)。

また、ライプニッツ係数というのは、将来にわたって得られるはずである収入を一度に貰うことになるので、その間の中間利息を控除する、という考え方です。

これは年齢によって考え方が変わることはありません。

まとめ

以上のように、高齢者の死亡事故については、逸失利益の算定において基礎収入と就労可能年数について、特有の事情があります。

実際の計算についてはケースによって異なりますので、弁護士にご相談されることをお勧めいたします。

弁護士 渡邊弘毅

死亡事故の逸失利益

交通事故被害者の方が、生きていれば得られたであろう将来の所得の推計を、死亡事故の逸失利益といいます。後遺障害にも逸失利益はありますが、死亡事故の逸失利益との違いは、①被害者の収入が100%無くなる点、②被害者が生きていた場合の生活費相当額を控除すること、の2点があります。

死亡事故の逸失利益の算出方法は以下の通りになります。

●死亡事故の逸失利益の算出方法

逸失利益=年収×(1-生活費控除率)×(就労可能年数に対するライプニッツ係数)

また、死亡事故の逸失利益の算出は、被害者の職業によって算出方法が異なります。

①収入を証明できる場合
交通事故前年の収入(税込み)

②収入を証明できない人(求職者、主婦など)
賃金センサスの男女別全年齢平均賃金に基づいた額

③無職者(幼児、18歳未満の学生、高齢者など)
賃金センサスの男女別全年齢平均賃金に基づいた額

生活費の控除率は、死亡により生活費がかからなくなるための控除ですが、日弁連の基準では以下の通りに定められています。

●生活費控除率

・一家の支柱:30~40%を収入額より控除
・女子(主婦・独身・幼児を含む):30~40%を収入額より控除
・男子(独身・幼児を含む):50%を収入額より控除

就労可能年数に対するライプニッツ係数(または新ホフマン係数)は、原則として、67歳までを就労可能年数としています。※開業医・弁護士については70歳程度まで認められる場合もあります。
※およそ55歳以上の方(主婦を含む)については67歳までの年数と平均余命の2分の1のいずれか長期の方を使用する場合があります。

死亡事故の逸失利益についても、お亡くなりになられた被害者の方に代わって適正な賠償金を受け取ることができるようにするためにも、弁護士にご相談されることをお勧めします。

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